「親なきあと」のことを考え始めると、どうしても不安になります。
親がいなくなったあと、障がいのあるお子さまはどうやって暮らしていくのか。財産はどのくらい残せばいいのか。きょうだいには何を頼めるのか。
お子さまが複数いる場合、なかでも難しいのが、財産の分け方です。
障がいのあるお子さまにどのくらい残すのか。きょうだいとのバランスをどうするのか。配偶者が先に亡くなった場合はどうするのか。
考え始めると、簡単には答えが出ません。
それでも、50代になったら一度、遺言を書いてみてほしいと思っています。
私はこの最初の一通を「取りそぎの遺言」と呼んでいます。
「取りそぎの遺言」とは
「取りそぎ」は、今の時点で考えられるところまで、一度形にしておくという意味です。
遺言というと、公正証書遺言を思い浮かべる方も多いでしょう。私自身、親御さまが70代になられたら最終的には公正証書遺言をおすすめしています。
ただ、最初から公正証書を作らなくてもいいと思っています。
初めて遺言を書くときは、何を書けばいいのかもわかりません。財産をどう分けるのかを考えているうちに、障がいのあるお子さまの生活や、配偶者との関係、きょうだいにお願いしたいことまで考える必要が出てきます。
そこで、最初は専門家と一緒に家族や財産の状況を整理して、今の考えを自筆証書遺言にしてみる。
完璧な遺言を作る必要はなく、「今はこう考えている」というところまで、一度形にしておけばいいのです。
そして、将来的に取りそぎの遺言をアップデートしていくのが良いと思っています。
50代は、これからのことを考えるのにちょうどいい
ひとつの目安になるのが、お子さまの就職が見えてくる50代です。
それまでは学校や進路のことで精いっぱいだったご家庭でも、就職が見えてくると、その先の暮らしを少し具体的に考えられるようになります。
親御さま自身も、まだ仕事をしている時期でしょう。これからの収入や退職後の生活も含めて、家族の将来を考えるにはよいタイミングです。
自分が先に亡くなった場合と、配偶者が先に亡くなった場合では、残された家族の状況も変わります。
障がいのあるお子さまの生活をどう守るのか。どのくらいの財産を残したいのか。きょうだいにはどこまでお願いしたいのか。自分の老後にどれくらい使う予定なのか。
一度考えてみるだけでも、「親なきあと」が少し具体的に見えてきて、漠然とした不安のもやが少し晴れてくるのを感じるはずです。
50代の遺言は、書き直す前提で作る
50代で作った「取りそぎの遺言」を、70代までそのまま使い続ける必要はありません。
お子さまの仕事や暮らしも変わりますし、親御さまの財産も変わります。きょうだいの生活も変わっていくでしょう。
最初から一生変わらない遺言を作ろうとしなくていいのです。
状況が変わったら、その都度書き直せばいい。
一度遺言を書いてみると、次に見直すときは、最初ほど大変ではありません。前に考えたことを土台にして、変わったところを修正していけばいいからです。
60代後半から70代前半に、もう一度見直す
次の節目は、親御さま自身がリタイアする60代後半から70代前半くらいです。
この頃には、お子さまも30代になっています。仕事や暮らしがある程度見えてきて、親御さま自身も退職後の生活や財産について考える時期になります。きょうだいも家庭を持ったりなどの変化が訪れるかもしれません。
50代で作った「取りそぎの遺言」を、ここでもう一度見直してみます。
内容に大きな変更がなければ、公正証書遺言にしておく。
状況が変わっていれば、必要なところを修正する。
公正証書にするときに、もう一度専門家に相談してもいいでしょう。すでに自分たちの考えが整理できているのであれば、ご自身で公証役場に相談して作ることもできます。
最初から最後まで、専門家に任せなければならないわけではないのです。

最初の一歩こそが、最もハードルが高く、専門家のサポートの意義も大きいと思っています。
まとめ、まずは50代で、一度書いてみる
「親なきあと」の準備を、70代になってから一度に始めるのは大変です。
その頃になって初めて、子どもの生活や財産の分け方を考えるのではなく、50代のうちに一度考えておく。
その後の10年、20年で家族の状況が変われば、また見直せばいい。
遺言は、一度作ったら終わりではありません。
家族の人生が変われば、遺言も変わっていいのです。
公正証書を作るほどではないと思っている方も、まずは一度、家族と話し合ったり、自筆で書いてみることをおすすめします。
50代で「取りそぎの遺言」を一通作っておく。
それだけでも、これから先の人生を考えるうえで、ひとつの安心材料になると思います。









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