知的障害のない自閉症や軽度知的障害の人は成年後見制度を使えるのか

目次

詐欺が心配でも後見人はつけられない?

「うちの子は騙されやすいので、成年後見人をつけた方がいいのでしょうか。」

親なきあとを心配する親御さまから、このような声を聞くことがあります。

しかし実際には、「心配だから」という理由だけで成年後見制度を利用できるわけではありません。

成年後見制度は判断能力が不十分な方を支援するための制度です。

そのため、軽度知的障害や知的障害のない発達障害のある方の場合、

  • 詐欺被害が心配
  • お金の管理が苦手
  • 一人で役所の手続きができない

といった困りごとがあっても、必ずしも成年後見制度の対象になるとは限りません。

今回は、親なきあと対策で見落とされがちな「制度の狭間」の問題について考えてみたいと思います。


成年後見制度は「判断能力の不十分な方」を支援する制度

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な方を法律的に支援する制度です。

家庭裁判所は、

本人の「事理弁識能力」、つまり

  • 契約内容を理解できるか
  • 財産管理について判断できるか
  • 法律行為の意味を理解できるか

といった点を踏まえて、後見・保佐・補助の利用が必要かを判断します。
(2026年現在の現行制度 今後改正されます。)

そのため、

「騙されやすい」「将来困りそうだから誰かに管理してほしい」

という理由だけで利用できる制度ではありません。


しかし、判断能力と社会生活能力は別の問題

「うちの子は頭は悪くないんです。ただ社会性が・・・」

というお話をよく聞きます。

実際に、発達障がいがあってもIQは高く

  • 会話は普通にできる
  • スマホも使える
  • 働いている
  • 一人暮らしをしている

という方もたくさんいらっしゃいますよね。

しかしその一方で、

  • 税金や公共料金の手続きができない
  • 郵便物を開封できない
  • 手帳や年金の更新を忘れてしまう
  • 市役所へ相談に行けない
  • 想定外の出来事に対応できない
  • 複雑な内容を理解できない
  • 病院に一人で行けない

といった困りごとを日常の抱えている方もいます。

特に自閉症の方などは

  • 強い不安
  • 感覚過敏
  • 対人コミュニケーションの苦手さ
  • こだわりの強さ

などによって、社会生活に大きな困難が生じることもあります。

判断能力・知能(IQ)と社会生活能力は、必ずしも一致しないのにも関わらず、

福祉関係の制度は「知的障害があるか否か」で線引きをしていることも多く

知的障害のない発達障害の方に必要な支援が届いていない、福祉の範囲の限界も感じています。


「契約能力はあるけれど騙されやすい」という難しさ

軽度知的障害や発達障害のある方の中には、契約内容そのものは理解できる一方で、

  • ロマンス詐欺
  • SNS投資詐欺
  • マルチ商法
  • 訪問販売
  • 高額なサブスクリプション契約

などに巻き込まれやすい方もいます。

しかし、契約の意味を理解して自分の意思で契約したと判断される場合には、成年後見制度による保護につながらないこともあります。

ここに、親御さまの大きな悩みがあります。


本人の意思も大切にされる難しさ

親御さまがどれだけ心配していても、本人が

「自分は大丈夫」

「後見人は必要ない」

と考えていることもあるでしょう。

特に知的障害のない発達障害のある方では、プライドもあり、自分に支援が必要だと感じていないケースも少なくありません。

成年後見制度は本人の権利を守る制度でもあるため、本人の意思や自己決定はとても重要です。

親が望んだからといって、本人の意思を無視して自由に利用できる制度ではありません。


成年後見制度だけでは解決できないこともある

こうしたケースでは、成年後見制度だけで、すべての困りごとを解決できるとは限りません。

本人の状況によっては、

  • 家族や専門家による見守り契約
  • 財産管理等委任契約
  • 移行型任意後見契約

など、将来に備えた仕組みを検討できることがあります。

ただし、これらの契約も、本人の自主的な意思が大前提となります。

また、契約による支援だけではなく、

  • 相談支援事業所
  • 役所の障害福祉課
  • 日常生活自立支援事業や居宅介護などの福祉サービス
  • 地域の民生委員や社会福祉協議会
  • 家族や親族とのつながり

など、日常的に相談できる環境を整えておくことも大切です。
福祉サービスについては、地域によって対象となる方や運用が異なりますので
親が元気なうちにリサーチをしてつながりを作っておくと良いと思います。

親なきあと対策で重要なのは、「困ったときに本人を支える人や場所があるか」という視点です。

孤立させないことも親なきあと対策

親なきあと対策というと、

お金、遺言書や信託、成年後見制度などの仕組みに目が向きがちです。

もちろん、それらも大切で、知って、活用していくことが大切です。。

しかし、軽度知的障害や発達障害のある方の場合、制度以上に大切なのは、

「困ったときに助けを求められる環境」かもしれません。

市役所に相談しにいける。

親以外にも頼れる大人がいる。

兄弟姉妹や親族との関係が良好に保たれている。

そのような環境づくりは、今日から少しずつ始めることができます。


まとめ

成年後見制度は、判断能力が不十分な方を支援するための制度です。

しかし、軽度知的障害や知的障害のない発達障害のある方では、

「判断能力には大きな問題がないが、社会生活には大きな困難がある」

というケースも少なくありません。

そのような場合、成年後見制度では解決できないこともあります。

親なきあと対策では、孤立を防ぎ、支援につながる環境を整えていくことを意識してくことが大事になります。


「我が家には、どういったサポートが必要なのか」を親が元気なうちに整理していきましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする


目次